◆「前有大梅林、饒子、甘酸、可以解渇」、曹操の巧みな兵隊人心掌握術で水源にたどり着くことができた。…世説新語・假譎◆
魏武行役、失汲道、軍皆渴。 乃令曰、「前有大梅林、饒子、甘酸、可以解渴。」。 士卒聞之、口皆出水、乘此得及前源。…『世説新語』・假譎
魏武 行役(こうえき)して、汲道(きゅうどう)を失い、軍 皆渇(かつ)す。
乃ち令して曰く、「前に大いなる梅林有り、子(=菓子・実) 饒(ゆたか、=饒舌・豊饒の饒[じょう])にして、甘酸(かんさん)なり、以て渇(かつ)を解(と)く可(べ)し。」。
士卒 之(これ)を聞き、口 皆水を出(い)だし、此(これ)に乘(じょう、=乗)じて前源(ぜんげん)に及(およ)ぶことを得たり。
(三国時代)魏の武帝(=曹操)が行軍したとき、水を汲(く)みに行く道を見失い、軍の兵隊は皆のどが渇いた。
そこで武帝は命令して言った、「前方に大きな梅の林が有るぞ、果実が饒(ゆた)かに実って、甘酸ぱくて、のどの渇きを癒(いや)すことができるぞ。」。
兵隊はこの言葉を聞いて、皆 口の中に唾液をだし、このおかげで前方の水源に到達することができた。
『世説新語』・假譎(かけつ、=仮譎・人を欺く・だます)に残された魏武帝・曹操の兵卒人心掌握術である。
故事成語「望梅止渇」、梅を望みて渇きを止(とど)む、の典拠となった。
外部電子書籍 -> 『世説新語』假譎、「前有大梅林、饒子、甘酸、可以解渴」
(01) 岡田正之 著『漢文叢書(有朋堂文庫)世説新語』巻十九 假譎、「前有大梅林、饒子、甘酸、可以解渴」656頁・有朋堂書店・㊟ 慶應義塾大学提供・Google bookshttps://books.google.co.jp/books?id=WTYvqnaFzLwC&pg=RA1-PA121
https://books.google.co.jp/books?id=WTYvqnaFzLwC&pg=PP696
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世説新語(抄) 書き下し文+現代語訳+解説
『世説新語』が南朝宋の劉義慶の著で、学者・文人・芸術家・僧侶など、魏・晋時代の名士たちの言行・逸話を集めたものである。
当時の遺文・記録の類から嘉言佳話を選び、徳行・言語・文学・方正・雅量など三十六項目に分類し、その興味深い人間像を記している。
中国の思想史・文化史・風俗史を知る貴重な資料としても価値の高い書である。…(表表紙見返し●概要●より引用)
世説新語 (新書漢文大系 21)
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